困ったねー
長男と美容院に行った。
田舎なので、車がないとどこに行くにも時間がかかる。
バスに乗って、一時間かけて美容院に着いたら、いつものように「ちょっとずれちゃったの、待っていて~」とのことで、外の椅子に座って通りを眺めること30分。
子どもとこんな時間を過ごせると嬉しくなる。何しろ、隣にいるから、いろいろ聞ける。
ご飯の時も子どもは近くにいるけれど、下手するとお互いに消化の悪いことになる可能性があるから、質問は、できたら食事時でない方が好ましい。
「あんた、何になりたいの?」
「わかんない」
「何かさ、これしたら楽しいだろうなーって、考えると心臓がドキドキするようなこととか、ないの?」
「ない」
「そうか、困ったねー」
「困ったねー」だけ日本語で言ったら、長男がアハハと笑って、一緒になって笑ってしまった。
ハンガリーに来てから好きになった日本語。「困ったねー」
“とりあえず保留”
悲しむわけでもなく、答えを考えるわけでもなく、ただ、現状を「困ったなー」と保留できる言葉。
(でも、ため息と共に言ったり、しかめっ面で言ってはいけない。)
高校進学するか、職業高校に行くかで、だいたいの方向を決めていくハンガリーの子どもたち。でも、何になりたいのか、どっちに進みたいのかもわからない子どもたちも増えてきている。
見える世界と可能性が広がって、それゆえに分からなくなってしまったという部分もあるのかもしれない。
年長さんの時に「保母さんになる!」と決めた私には、自分の中を探った時にドキドキするものがないという感覚がどうにもわからず、いっしょに「困ったねー」と言うしかないのだ。
帰りは、アイスを食べて、またバスで帰ってきた。
なんだか、いい一日だった。