Q&A 戦争を伝える?

Q. 今のロシアとウクライナの戦争を子ども達にも考えてもらいたいと思っています。保育室に新聞の記事を貼ったり、子どもたちと話をしたいと思っていますが、どう思いますか?

A.これは、お問い合わせ欄に届いた質問です。

あくまでも、私(サライ)個人の考えとして回答しますね。

「戦争は怖いよね、だめだよね」と言うことは簡単だと思うのです。でも、それを軽く口にしたとたんに、その問題はとっても軽い問題になってしまう。

ましてや「…だからね、喧嘩したらダメなの。お友達のおもちゃも壊したらだめだし、ちゃんとお話して仲直りしましょうね」なんていう日々のレベルに下げたら絶対にダメな問題だと思います。

子ども達に何かを伝える時には、まずは自分が本当に伝えたいことって何だろう?を考えないといけない。

でも、戦争を通して伝えたいことって何でしょう?

たくさんの家族がバラバラになり、お父さんは死んでしまうかもしれないし、家は壊されて、親子が何万人もが言葉の通じない国に逃げて、明日のことも分からない毎日を送っているということ?

たくさんの子ども達が「大きくなったら何になろう」なんて考えることもできない日々を送ることになったこと?

思春期の子どもたちが好きな人のことを考えたりすることなんてできなくなって、一番キラキラした時を、失ったこと?

子ども達がお母さんが泣いている姿を毎日見ることになること?

たくさんのお母さんが言葉の通じない国での子育てを強いられ、子ども達も保育園や学校で苦労すること?

美しい村や建物がロケット弾で壊されていること?飼われていた動物たちも逃げまどっていること?その土地にしかなかった味や民族伝承が消滅すること?

避難民を受け入れた国や地域でも、きっと次第に問題や緊張が生まれていくだろうこと?

そんなことを子どもたちに伝えたい?

でも、子どもたちは日々テレビで見ているかもしれない。大人が何気なく流しているテレビでは、戦争の映像が流れている。子ども達は見ていなそうで、実は見ています。

子ども達のあそびを見ていたら、きっと何らかのサインがあるはず。何気ない会話の中にも出てくるはず。

私だったら、必要に合わせて子ども達と個別に話すと思います。きっと子どもによって気になっていることは違うはず。目にしたものが何なのか、どんなことを大人の会話から聞いたのか、それを聞いて、話をしたいです。

とっても悲しいことが起こっているけれど、困っている家族をたくさんの人たちが助けてくれていること。

戦争が終わったら子ども達はきっとお父さんと会えるよ。

壊れた街も、皆できれいにできるといいね、と伝えてあげたい。

現実はもっと残酷なはずで、ハッピーエンドで終わることなどほぼないと思うけれど、でも、子ども達がつらい現実に漬かる必要はないと思うんです。ましては、保育室に戦争の写真を持ち込む必要なんてないし、逆にそれはしてはいけないことのように思います。

子どもだって、小学生にもなれば、現実は厳しい・・・・ということにすぐに気が付きます。でも、そんな時に必要なのが「きっと良くなるはず」と希望を持てること。むやみやたらと楽観的にとらえるという意味ではなくて、ちゃんと現実を見据えながらも希望を持てること。

(だから、幼児期に昔話をたくさん読んであげることが大切。昔話はたいがい問題が何らかの方法で解決して終わります)

私たちができるのは・・・

子どもたちが遊びの中で日々の疑問やストレス、緊張を表現できるあそびの場をしっかり設けること(だからと言って、間違っても戦車や戦闘機をあそびの中に持ち込まないで下さいね!!!!!)。

子ども達が身の回りの環境の素晴らしさを感じられるようにすること(春は命を感じられる季節です。たくさんの「きれい!」に出会えます)。

しっかりと観察し、いろいろな視点を持って考える力を育てること。

表現する手段を伝えること(言葉、絵、造形、踊り・・・自分なりの表現)

・・・・

もし、日本が壊れてしまって、今の子ども達が「日本」を思い出したとき、そこに出てくるのが「キメツ」やお笑いの世界、youtubeで流れるくだらない内容では悲しすぎます。

子ども達の中に原風景として残るようなもの、残してあげたいものって何だろう・・・・も、保育園でもっともっと考えたいです。

・・・・

テレビで「今回の戦争で自分たちにできること」を言い合うという中学生?の授業を見ましたが・・・・。それこそ、きれいごとを言って終わることを教えている典型の気がしました。

それよりも、ロシアとウクライナの本(有名な絵本もたくさんあります)を読んだり、音楽を聴いたり、舞踊を見たり、どんな伝統があるのかを知ったり・・・・そういうことを通して、それぞれの国には積み重ねてきた独自の歴史や文化があることを知ることをした方が、もっと深いところで「私たちにできることに何があるんだろう」を考えるきっかけになるのではないかな…と思ったのでした。

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