いつ作るの?

マイバ幼児保育園の廊下。真っ白なカーテンと天井から舞い降りるかのような白いペーパーコースター。見学の日、この下を通るたびに幸せな気持ちになった。

この幸せな気持ちは何というのか・・・きれいだったから、だけではない。

毎日、ここを通ってきれいだなと感じられる子どもたちと保護者がいることに。

そして、何よりも、保育園の廊下からこんな素敵な世界を生み出した保育士がいることに。

ペーパーコースターは手作り。ちゃんと専用の機械があるのよ、いろいろな形を作れるの!と話してくれたが、それでも手作業のはず。一つ一つをつなげるのも結構な手間だ。

サンタさんの時期の制作、長靴作り(マイバ幼児保育園)。フェルトで縫い合わせてあり、大きな子たちはボタンで模様もつけている。出来上がってしまえば「きれいだなー」だけれども、ここに至るまでの準備などは、保育士なら想像がつくと思う。

ハンガリーの保育園を見学に行くと、課業やあそびの中のアイデアで、保育士が準備したものがいろいろとある。そして、見学者から必ず出る質問は「いつ準備をするのですか?」

ハンガリーの幼児の保育士がクラスで働く時間は6時間半で、それ以外の1時間半は準備や会議、研修、遠足の下見・・・もろもろのクラスで子どもたちに関わる以外の時間に当てられることができる。

「そういう時間があるなら、できますね」

確かに、そういう時間があるから、日本の保育士よりは楽だと思う。実際に、早番で7時半に出勤した保育士は2時には帰宅するし、午後番で10時半に出勤した保育士は5時に帰宅する。

でも、そういう時間があるからと言っても、自分の時間を使って研修に行ったり、他のクラスの見学をしたり、会議や保育の準備・・・といった時間をすべて計算すれば、一日8時間の枠は軽く超えてしまう。

「それには超過勤務手当がつくのですか?」

つかない。つけられない。つけようもない。

保育士が仕事以外のプライベートを充実させるのはとても大切。だけれども、職業柄、そこに仕事が紛れていくのは避けようがない。

私の母は保育士だった。母が家で保育の準備をするのをみていたり、手伝うのが私は大好きだった。今考えてみると、時間のやりくりは相当大変だったと思うのだけれども、でも、子どもたちの反応を想像したりして、本人も楽しんでいたのだと思う。

それを、保育園で行うのか、自宅で行うのか、家庭があるから手早く仕事をすませることを自らに強いている人と特に急いで帰る必要もないのでのんびりと園に残っている人でも、園での勤務時間が変わってくる。

夜遅くまで残って当たり前の職場はもちろん問題ありだけれど、タイムカードできっちりと勤務時間を管理するシステムが入ることの弊害もきっと出てくるし、実際に出てきている。

保育士が職場を離れてプライベートな時間を楽しんだり、自分の世界を広げる時間を持っていなければ、冒頭のような世界は保育園に現れないと思う。大人として、一人の女性として、そして、教育者として、いろいろな視点から、子どもたちにどんな世界を伝えたいのかを考える時間がなければ、保育士は、保育園はどんどん子どもっぽくなっていってしまう危険がある。

それにしても、日本の時間感覚は良くも悪くもどうしてここまで独自なのでしょう?卑弥呼の時代や平安時代からあったとは思えないし、戦後の発展にはすでにこの時間感覚が関係していると思うし、何がどうなって今の日本があるのか、国や国民性って面白いなと思います。

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