担当制と主体性
担当制で子どもの主体性って育つんですか?と聞かれることがあります。
大人が関わりすぎて、主体的に育たないと思うのですが・・・とも。
育ちます、ちゃんとした担当制なら。
担当制も色々なやり方があるので、場合よっては(もしくは大人のタイプによっては)大人と子どもの距離が近すぎて子どもが自立しにくいということはあります。でも、それと、子どもの主体性が育たない、というのは違うと思うのです。
きちんとした担当制は日課作りや環境づくりとセットになっています。ですから、大人との関係で課題があっても(もしくは、生活の場面で課題が残ったとしても)、子どもが生活全体の中で主体的に行動したり、あそびの中で主体的に自分のあそびや遊びたい友達を選ぶ力は育っていきます。ちょっとしたトラブルなら自分たちで解決できるようになっていきます。
きちんと丁寧に教えてもらうことでルール感覚(生活の中には決められたことがある)課題意識(最後まできちんと行う)も育ちます。大人が見ているから、怒られるからする、というのとは全く違います。
そして、何よりも、乳児期から丁寧に関わってもらっていることで「自分」を知ることができます。
自分の快適な状態や不快な状態を把握してもらえ、それを言葉にしてもらえます。
自分ができることを行うことができ、できないことは方法を教えてもらえます。できた時は気が付いてもらえますし、褒めてもらえます。できない時は「こうしてみたら?」と助言してもらったり、手伝ったりしてもらえます。これを、「主体性がなくなる」ととらえるのは極端な解釈で、きちんと自分を見てくれる大人がいて、きちんと褒めてもらい、できないことを援助してもらいながら、少しずつできることが増えていけば、そして、大人が上手に子どもと距離をとっていけば、子どもたちは「自分はきっとできる」と感じながら乳児期を過ごし、少しずつ自立していきます。
自分にふさわしい遊具があり、それらであそぶ時間もしっかりと保証されていれば、自分ができることや自分が好きなことを感じながら過ごせます。できないことを繰り返したり、友達と関わる時間もあります。
子どもたちは、生活(育児)やあそびの中で大人と関わったり、自分であそんだり、友達と過ごす中で、だんだんと自分を知っていきます。主体的に行動することの基本が「私」にあることを考えれば、子どもたちが自分をどれだけ丁寧に知っていけるか、どれだけたくさんの経験をしながら自分を肯定的に知ることができるかが、主体性の大きなポイントになります。
「園庭であそぶか室内であそぶかを選べる」というような大雑把なことではなくて、もっともっと日常の細かなところに、主体性を育てるポイントがあります。
同じものを一緒に使う。それも無言のルール(列を同じ色で並べる)を守りながら。2歳児なので「この列は赤ね」「今度はみどり」と言いながら並べていったのではないと思うのです。どちらかが色を置き始め相手がそれを見て、同じように続ける。
それも、手も交差しているし、なかなかやりにくいですね。それでも、トラブルにならない。一人であそんだ方がどんどんできるかもしれないけれど、でも、一緒にあそぶ方が楽しいことを知っている。
心地いい自分がいて、その心地いい自分は誰かと一緒にあそぶことが楽しいことを知っている。
自分があるから、自分であそびを選べるし、あそびのルール(同じ色を並べる)を考えられるし、そして、必要であれば相手にも合わせられる。先生が調整に入らなくても、主体的に遊びの場面を進めていく。
下は新学期始まってすぐの3歳児クラスです。
3歳児さんはまだまだ物の配置や体の動かし方、空間の使い方が上手ではありません。だから、机の上でものがぶつかったり、広がりすぎて落ちてしまったり、自分の場所がないと怒ったりと、まあ、いろいろとトラブルが起こります…でも、起こってないですね(笑)
それも、新学期2日目の姿ですよ!!
皆、自分の場所を上手に探して、他の子がしているあそびを気にせずに自分のあそびをしています。でも、この感じだと、ちゃんと他の子のあそびも感じながらあそんでいますね。周りを感じながらも自分の遊びに集中できるってすごいですよね!
自分が育っているから周りのことも理解できる。相手との距離もとれる。相手のあそびも尊重できる。
主体性の育ちはこんな場面一つひとつで見つけることができます。
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・・・・で、次のお便りのテーマは「主体性」…
あー―面倒なテーマを選んでしまったなーと思いながらも、でも、今これは取り上げたほうがいいなーとも思い、どうしたらわかりやすいかなーと考えているところです。(で、現実逃避で遊具の選び方シリーズが始まったのですね^^;) 頑張ります。