柿ですよ ♪

岐阜の、柿の産地の方が、柿をたくさん送ってくださった。

「わ、柿だ!」と玄関先で驚いたら、宅急便を持ってきたお兄さんが「そう、柿ですよ」とニコニコしていた。あんなに嬉しそうな顔をした宅急便のお兄さんは初めて見た。「もしかして岐阜出身ですか?」とたずねたくなったくらいだ。

渡し甲斐のある荷物というのもあるのかもしれない。

明日ハンガリーに戻るので、最後の荷作りをしている。二か月も日本にいるのに「そのうちに・・・と思いながら日が経つ+買い物する時間がない=荷作り当日、お土産がないような気がしてパニックに陥る」というパターンを毎回繰り返している。

それでも、いろいろな方からもらう各地のお土産などをトランクに入れて、そこに思い立った時に買いためておいた乾物や調味料、今日、スーパーに走って買いこんだ食材などが加わるので、それはそれは統一感のない、びっくり箱のような不思議な世界が作りだされる。

そして、子ども達はといえば、すでに大学生と高校生なのに、毎回、トランクをぐるりと囲み、中から出てくるものを見ては新鮮に驚いたり呆れたりしている。

大根を半本。「これ、ハンガリーでも売っているよね」とため息をつかれるのは分かっているけど、ハンガリーと日本の大根は根本的に違う!!

秋ナス。レンコン。恒例のキャベツ。届いた柿数個。

こんにゃく、厚揚げ、がんもどき・・・保冷剤で何とかもってくれることを祈りつつ、おでんを作りたい。

餃子の皮や味付きおいなりさんの袋は、この時期なら大丈夫。

その他、ありとあらゆる物・・・

そこに頼まれていた日本酒の小瓶やビールを入れ、古本屋で買いためておいた本が加わり・・・・この辺りから、恒例の体重計とにらめっこの調整が始まる。(注:私の体重ではないです。トランクの重量です)

子どもたちに自分の国の味を!とは、外国で子育てをしている親ならだれもが切実に願うことだろう。「今日の煮付けはいい味だね」とか「出汁がきいているね」なんて言い合いたいと、日本にいる親ならあまり意識しないことを真剣に願ってしまう。でも、いくら思っても、日本の食材が手に入らない国では「正当な日本の味」を出すこと自体がほぼ不可能なので、これはかなわない願いなのだとあきらめていた。

あきらめていたのだけれど、海外でできる日本食といえば乾物が多く、ひじき、切り干し大根、干ししいたけ、昆布、素朴な醤油味、みそ味・・・かなり伝統的な味を、けっこうな頻度で口にしているということに気がついた。そして、子どもたちにとっては、ハンガリー料理の中にあるちょっとした日本の味は、より日本を感じさせるものであるらしいのだ。異なるものの中にあるから、よりそれが強調され、意識することになるというのか。子どもが大きくなってくると、小さい頃にはわからなかった発見がいろいろある。

・・・・・・

保育園に外国籍の保護者がいたら、「あの保護者、言葉通じなくて困ってしまう」ではなくて、いろいろと悩むことが多いのだろうな・・・と想像してあげてほしい。

自身のホームシックや将来の不安、「私っていったい誰!?」といった自己喪失感を抱えながら、遠く離れた祖国、子どもの中にあるもう片方の国をどう伝えていけるのだろうかと悩みながら生活している人が多いと思う。

「日本での生活、しんどくない?」そんな声をかけてあげるだけでも何となく嬉しい人もいると思う。「大丈夫ですよー」といいながら自分を励ます人もいると思うし、「そうか、私ってしんどいのかも」と自覚する人もいるかもしれない。私は子どもの担任の保育士さんに尋ねられた時、まったく意識もしていなかったのに、涙が出てきてとまらなくなってしまったことがある。

・・・それにしても、私は明日、成田空港までどうやってたどり着くのだろうか。そして、成田空港では、先に送っておいた大きなトランク二つをロビーで広げてもう一回整理し直さなければいけないのが目に見えている。空港で広げるトランクの中には、まるでスーパー帰りのような品々が詰め込まれるはずで・・・想像するだけでもものすごく恥ずかしい。

というわけで、もし空港でそういう人を見かけたら「きっと海外の家族に日本の味を持っていきたいのだろうな」と暖かい目で見てあげてくださいね ♪

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