おなかがすいた
思春期の子どもの主張・反抗の仕方はいろいろある。
静かに、でも全く無視のタイプ。一見何も問題がなさそうだけど何かありそうでつかみどころのないタイプ。親の意向などかまわずに好きなことを好きなだけやってくれるタイプ。冷ややかに、かつ冷静に痛いところをついてくるタイプ。そして、言わずにはいられない、態度に出さずにはいられないタイプ。
日本から戻って飛行場に着くと、夫と三男、そして、ぶすっとした二男(当時高校生)が迎えに来てくれていた。決して連れてこられたわけではなく、自らの意志で来ているはずなのに、ぶすっとしている。
もう少し小さければ、そして、もう少し大人になっていれば、久しぶりに会えた嬉しさをそのまま顔に出せる。でも、中途半端な年齢では、嬉しくても、悲しくても、腹が立っても、その表現が自分でも思っていない形となって表れてしまうことがある。
車に乗ってしばらくしたところで、二男がいった。
「お母さん、お腹が空いた」
カバンの中にお菓子を入れていたので渡す。三男は喜んでいるけれど、二男は「これじゃあお腹はいっぱいにならない」とむくれている。「どこかで食べて帰る?」「いらないよ」といったやり取りの後で、長旅の疲れがピークになっていた私がキレた。
「お母さんは飛行機に乗っていたんです、ご飯なんて作れるはずないでしょ!!」
続いて夫の
「いい加減にしろ!!」と、怒鳴り声が続いた。
その時の二男の悲しそうな眼は今までに何度も見たことのあるもので、その度に「あー、彼のいいたいことはそんなことじゃなかったのに・・・」と、親としての力のなさに後悔して落ち込んできた。
二男はきっと、「お母さん、ぼくはお母さんのごはんが食べたくて待っていたんだよ」と言いたかったのだと思う。
それから数年。
飛行場に着くと、夫と子どもたち三人が勢ぞろいして待っていてくれた。そして、私の顔を見るなり二男が言った。
「お母さん、お腹が空いた」
もちろん、笑っている。家族のみんなも笑っている。
私は、成田のコンビニで買ったメロンパンを子どもたちに渡した。
「言われると思ったよ」